子どもの「心」は五感を感じてつくられる
新聞を読んでも、テレビのニュースを見ても、暗い話題が多いことが残念でなりません。最近、親が子を、子が親を殺めたという事件を見聞きしても、「またか」と思うようになり、そんな異常な出来事を当たり前に感じてしまっていることに、愕然としました。
殺人だけでも辛いのに、血を分けた親子の間で命の奪い合いが起こる。どうしてそんな行為にいたるのか、不思議でなりません。
赤ちゃんを見ていると、残酷な罪を犯した人でも、生まれたときから悪い心を持っていたわけではないと思います。では、よいにしてもわるいにしても人間の「心」は、どうやってできるのでしょうか。
お母さんのお腹に命を宿したときから、心は自然にできていくと思います。胎教でお母さんに穏やかで楽しい気持ちで過ごすことを勧めるのも、そのためでしょう。赤ちゃんがこの世に産まれたら、経験することすべてが、初めての出来事になります。お母さんから与えられた母乳を飲み、声を聞き、抱っこされて安心し、両親や家族のやさしい笑顔を見る。こうやって五感で感じながら、子どもの心はつくられていくと思います。
大人の行動や言葉が心に影響を与える
赤ちゃんや子どもは、ひとりで生きられません。食事も衣服も教育も礼儀も、すべて親や大人から与えられて成長します。ところが心は違います。自分の目で見て、耳で聞いて、鼻で嗅いで、舌で味わい、肌で感じて、五感を通して、さまざまな情報が勝手に入ってきて、心を作っていきます。
親や大人の行動や言葉が勝手に子どもの中に入り、それが「知識」になり、そしてこの知識を行動に変えるのが「知恵」だと思います。例えば、親や大人が犬をかわいがれば、子どもも犬をかわいがります。親が怖がれば、子どもも犬に近づこうとしません。親が物を投げて犬を追い払ったら、子どもも犬に物を投げるようになるでしょう。子どもは、親のすべてを見ています。いいことも、悪いことも。親が自分のことしか考えないような行動をとれば、子どもも自分のことしか考えない心を持ちます。「子は親を映す鏡」とはよくいったものです。
また、子どもの心に、悪い影響を与えるのがテレビです。見せたい番組もありますが、テレビはいいことを伝えるのはわずかで、殺人や凶悪犯罪の事件・事故、人の不幸などを繰り返し何度も放送します。これは子どもの心を育むのによくないと思います。
まわりの人々の幸せを思う心が、あなたを幸せにする
よい心とわるい心の違いは、何でしょうか? よい心は「まわりの人々の幸せを思う心」、わるい心は「自分だけの幸せを思う心」だと私は思います。もしも、無人島などで誰にも会うことなく、1人で生活するとしたら、自分以外の人間がいないので、よい心もわるい心もありません。人間が複数で社会を形成して生活するようになったことで、よい心、わるい心が出来たのだと思います。
私とあなたの目の前に、リンゴが1個あるとします。私が先に手を出してリンゴを取ったとしたら、私は得してあなたは損します。あなたから見ると、独り占めした私のことをわるい奴だと思うでしょう。しかし、もしも私がそのリンゴをあなたに差し出したとしたら、どうなるでしょうか。私はリンゴを手にできずに損しますが、あなたは得をする。あなたは私のことをよい人だと思うでしょう。そしてあなたに「まわりの幸せを思う心」があれば、リンゴの半分を私に渡すのではないでしょうか。
自分が先に幸せになろうとすると、まわりから不満が出て、もめごとが起こります。まわりから幸せになってもらおうと思えばトラブルは起こらず、自分も自然と幸せになると思います。
心は変化し、未来に子孫に伝わる
心は、大人になっても生きているかぎり、よくもわるくも変化します。例えば仕事を教わる上司や先輩がいい加減だったら、それが当たり前と感じる心になってしまう。常識的な知識を持つ大人でも、影響を受ける人によって心は豊かにもなるし、貧しくもなる。だからこそ価値観がはっきりしていない子どもたちには、正しい心ができるための環境が大切です。
子どもの心を健康にするには、絵本がとても役に立つと思います。特に昔話の絵本は、よいこととわるいことがきちんと描かれ、「他人を思いやる心が大切である」と教えてくれる最高の教科書です。おとうさん、おかあさんだけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんも一緒になって、子や孫に読み聞かせてあげれば、私たち大人も学び直す、よいきっかけになると思います。ぜひ、絵本を読んでよい心を育ててください。
人は、いつか必ず、亡くなります。肉体は滅んで、土に返ります。しかし、私たちの心は、わが子や家族、友人の心の中で記憶として生き続けます。そして次から次へと心のバトンは受け継がれていきます。イエス・キリストや釈迦如来などの聖人の心は、何千年にも渡って人々の心の中で生き続けています。
あなたは自分の子孫に、どんな心を伝えますか。